第197回、はっぴー☆ちゃんねる:慎重な楽観主義者であれ


「おは☆はっぴ〜♪」
「第197回、はっぴー☆ちゃんねる!ナビゲータのしんに」
「アシスタントのえてぃ、るなでお送りいたします♪」


「慎重な楽観主義者でありなさい!」


 なんの脈絡もなく、えてぃが小ぶりな胸を張ってなにかの受け売りを偉そうに語った。
 しんは、時間変化する磁場とスピンの相互作用の計算する手を止める。なんでK先生はこんなに計算の手間のかかる問題を院入試にだすのだろうか。一時間で計算ミスなしに解ききれる気がしないのだが。…ええ。物理学科以外の人はおいてきぼりなのはわかってますよ?しんは面倒くさそうに視線をノートからえてぃにうつす。
 るなも目をぱちくりとまたたいてえてぃを見つめた。
「と、フルメタルパニックカリーニンは言っていたわ」*1
フルメタかよ」
間一髪おかずにつっこみを入れるしん。普段はボケとして定評のある彼であるが、実は突っ込みのセンスもあるのではないかと自問自答する。
 カリーニンとはフルメタルパニックというライトノベルの主人公、宗介の育ての親に当たるソビエト出身の軍人だ。
 ふう、っとため息をつくとしんはえてぃを促した。
「で、慎重な楽観主義者ってどういう意味?」
 るなも首をかしげる
「慎重さと楽観主義って相反する感じがするのです」
 楽観するのであれば慎重にはならないのではないのか?
「物事の成功において慎重さは不可欠よ。けれど慎重になればなるほどあらゆるマイナスの可能性が示唆されてくるわ」
「つまり物事の最悪のパターンを想定してしまうわけだな」
「ええ。そうね。すると不安になる。うまくいかないのではないかと思う。悲観的になる。おびえという逃げに走る」
 自分の言葉に、うんうん、とうなずくえてぃ。自分の言葉に酔っているようだ。
「悲観的なのはたしかに精神的によくないのですよ」
「絶望という甘い誘惑に逃げるのは容易なことよ。でもそれは成功する可能性を指数関数的に減少させるわ」
「どんなに時間がたっても0にならないところがにくいのです」
と、るな。
「たしかに」
「こら、るな。揚げ足とらないの」
「ぁぃ><」
小さく縮こまるるな。こほん、と小さく咳払いをすると再び続ける。
「どんなに可能性が小さくても最後まで成功する、と信じ続ける楽観さ。それでいてその努力をおこたらない慎重さ。その両者が共存するのが一番理想的な姿と言えるわ!」
と、締めくくった。
「まあ、確かにそうかもしれないな」
「そうありたいものなのです。。。」
「でしょ?」
 関心したようにえてぃを見るしんとるな。たまにはいいことをいう。
「たまにはってなによ?」
 心を読むな。
「しかし、何でそんな格言(?)をいきなり?」
「受験前のあんたに言いたくてね」
「はあ」
生返事を返すしん。
「あんた最近、研究室に受かる気がしないとかなんとか言ってるじゃない?」
「うん。実際問題を解いているとそう思ってしまうことが多くて…」
「あんたのそんなところが悲観的になっているというのよ!すでに負け犬ね!!!」
「な、なんと!?」
衝撃を受けるしん。その横で感心するるな。
「慎重になって勉強するのは結構だけど、そこで落ちると思い込むことは自分のこころに落ちる、落ちる、と自己暗示かけるのと同じことなのよ!!!というわけでもっと楽観的になりなさい!」
「は、はい!!!」
なぜか敬礼するしん。
「そ、それで師匠!!!楽観的になるにはどうしたらいいのでしょう!?」
「それは自分で考えなさい!」


………


一番肝心なところ放置ですか。。。
「が、がんばります。。。」
前向きになろうと思うしんであった。



「…まあそれでも落ちるときは落ちるけどね」
ぼそっと、えてぃ。
…せっかく前向きになったというのになんでこのタイミングでそれいうかな。。。

*1:フルメタルパニック! 極北からの声』参照のこと。