第151回、はっぴー☆ちゃんねる:『弱い相互作用2:フェルミの黄金律』


るな 「おは☆はっぴ〜!なのですよ?」
しん 「第151回はっぴー☆ちゃんねる!ナビゲータのしんに」
るな 「臨時のアシスタントのルナなのです!」
しん 「今日も帰ってこないのなあいつ」
るな 「えてぃさん、大丈夫なんですか?」
しん 「まあお腹すいたら帰ってくるだろ」
るな 「そんな・・・家出した子供じゃあるまいし」
しん 「というわけであいつの代役、がんばれ〜♪」
るな 「う〜、緊張するです。。。でもルナ頑張るのですよ!ファイトなのです!」


しん 「さあ前回に引き続き弱い相互作用の話をするですよ」
るな 「はーい!」
しん 「さて、前回話したとおり弱い相互作用の例の一つにβ崩壊の話があるって言ったよね?」
るな 「はい!」
しん 「β崩壊にも三種類あるんだ。」

\beta^-崩壊 n \rightarrow p^+ + e^- + \overline{\nu}_e
\beta^+崩壊 p^+ \rightarrow n + e^+ + \nu_e
電子捕獲 p^+ + e^- \rightarrow n + \nu_e

るな 「pが陽子、nが中性子\nuニュートリノですよね?\overline{\nu}はなんですか?」
しん 「アンチニュートリノ。電子に対する陽電子みたいなもの。詳しくはwikipedia反物質の項を見てください」
るな 「はいなのです!」
しん 「ところでニュートリノってなんだ?」
るな 「カミオカンデで存在が確認された素粒子。あまりに質量が小さい*1からほとんど反応しないで素通りしちゃうのですよね」
しん 「うん。じゃあさらに質問。そんな物質がどうして発見されたかわかる?」
るな 「あれ?そういえば・・・」
しん 「でさっきの・・・そうだな、\beta^-崩壊の場合は中性子が崩壊したあとは三つにわかれるでしょ?つまり三体運動するんだ」
るな 「あ、なるほど。でもそんな小さい物質どうやって確認したんですかー?」
しん 「霧箱実験っていうのがあるんだけどここで話すと長いんで脚注で。*2まあそうやって見つかったわけ。」
るな 「中性子が電子と陽子にのみ分裂するなら正反対に動くはずなのにそうじゃないから、何か別の粒子が出てるんだっていう仮説をたててたわけですね?」
しん 「というわけでこういう反応が確認されたわけですよ。」
るな 「おー、なるほど」


しん 「これからはややこしくなるんで\beta^-崩壊を中心に(以下β崩壊と略)話をすすめるですよ」
るな 「はいなのですよ」
しん 「β崩壊で静止していた中性子が陽子と電子とニュートリノに変わるとき、もとの原子は静止していたはずなのにいきなり動き出すよね?この運動エネルギーってどこからくるんだい?」
るな 「質量欠損ってやつですかー?」
しん 「そう。アインシュタインE=mc^2ってやつだね*3。崩壊した後の陽子の運動量は質量が重いから電子やニュートリノと比較すると無視できるくらい小さい。から陽子のエネルギーはE_p^2\simeq m_p^2c^4とできる。だからE_n-E_pのエネルギーが電子とニュートリノに割り当てられるんだ」
るな 「ふむふむ。」

しん 「だけどそのエネルギーの状態は確率的にきまるんだ。*4横軸がβ崩壊後の電子の運動エネルギー、縦軸が個数。そしてこのグラフの一番右の値が、電子の運動エネルギーの最大値*5
るな 「本当に連続分布なんですねー」
しん 「うん。さて、このβ崩壊で単位時間あたりに『中性子の状態』から『陽子、電子、ニュートリノの状態』に遷移する確率を考えたいんだけどそれに便利な式があるんだ」
るな 「それはいかに?」
しん 「それがこの式!『フェルミの黄金律』!」
るな 「なんか無駄にかっこいいですね!」
しん 「格好いいだけじゃなくて『一次摂動の範囲で単位時間当たりに(k,σ)→(k',σ')へ遷移する確率』を一般に求めることができる便利な式なんだ」
るな 「具体的にはどんな式なんですか?」
しん 「これ」
\lambda = \frac{2\pi}{\hbar}| <\phi_f |H| \phi_i>|^2 \frac{dn}{dE} (e^-,\overline{\nu_e})

記号 式の意味 β崩壊の場合
\lambda 遷移確率 中性子が電子、ニュートリノ、陽子の状態に移る確率
\phi_i 作用前の状態の波動関数 中性子の状態の波動関数
H 相互作用ハミルトニアン作用素*6 弱い相互作用による変化
\phi_f 作用後の状態の波動関数 陽子、電子、ニュートリノ状態の波動関数

るな 「なんか難しそう・・・」
しん 「フェルミの黄金律の導出を知りたい方は川合の量子力学の教科書の第二巻をご覧ください」

量子力学(2) (KS物理専門書)

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るな 「要☆勉強なのですよ〜♪」
しん 「というわけで次回からこの『フェルミの黄金律』をつかって弱い相互作用の結合定数を求めていくですよ〜♪」
るな 「は〜い!」


P.S.怪しい議論がありましたらツッコミよろしくお願いします。

*1:現在は電子やニュートリノは点と考えられているので大きさは考えられない。

*2:アルコールを過飽和状態にし、そこで\beta^-崩壊を起こさせる。アルコールは過飽和なので非常に不安定で微小な粒子でも衝突するとすぐ液化する。液化したアルコールが白い軌跡として見えるため、そこに粒子が通ったことがわかる。これは電子といった10^{-15}mといったオーダーの物質の軌跡も観察できる。で、\beta^-崩壊の軌跡を観察すると、もし中性子が陽子と電子しか発しないのなら正反対に運動するはずなのに、直線から外れた角度に崩壊するため、何かがあると考えられる。http://homepage3.nifty.com/Kume/off/20060815.htmlに写真あり

*3:正確にはE^2=m^2c^4+p^2c^2。よく見るE=mc^2は運動量が0の時の話。

*4:この式はフェルミの黄金律の式を適当なパラメータをおいてgnuplotでグラフ化したものであり、実験した結果のデータではないので注意!実験データはいずれ出します。たぶん。

*5:=つまりニュートリノの運動エネルギーが0のとき

*6:わからないヒトはエネルギーとでも思っておいてください